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「辞めたい」と言ってきたスタッフに、僕が最初にかける言葉

代表・メンバーブログ高井 律明

こんにちは。株式会社KABUWAKE代表の高井律明です。今日は、僕が経営者として、何度も向き合ってきたある場面について書かせてください。スタッフから「辞めたいです」と言われる瞬間のことです。

「辞めたい」という言葉を、どう受け取るか

飲食店を運営していると、スタッフから「辞めたいんですけど……」という言葉を受け取ることは、決して珍しくありません。最初のころは、正直に言うと「えっ」と焦っていました。人手が足りなくなる不安や、自分のマネジメントが悪かったんだろうかという反省が、頭の中を一気に駆け巡っていました。

でも今は、少し違います。その言葉をもらったとき、僕が最初にかける言葉は、ほとんど決まっています。

最初にかける言葉は「なんで辞めたいの?」じゃない

「辞めたい」と打ち明けてくれた相手に、僕がまず言う言葉は——

「話してくれてありがとう。」

これだけです。最初の一言は、これしか言いません。

辞めたいという言葉を口にするのは、相当な勇気がいります。特に飲食の現場は忙しく、人間関係も密接です。言い出すまでに、どれだけ悩んで、どれだけためらったか。その重さを、まず受け取りたいんです。

「なんで?」「いつから?」「後任はどうするの?」——そういう言葉を先にぶつけてしまうと、相手は「やっぱり言わなければよかった」と心を閉じてしまう。そう思っています。

本当の理由は、最初には出てこない

「話してくれてありがとう」と言ったあと、僕はゆっくりと話を聞く時間を作ります。そこで出てくる「辞めたい理由」は、たいてい最初の言葉とは少し違います。

「シフトがきつくて」と言ってきた子が、実は人間関係で消耗していた。「やりたいことが見つかった」と言っていた子が、じつはずっと認めてもらえていなくて、しんどかっただけだった。「将来のことを考えると不安で」と言ってきた子が、本当は誰かに背中を押してほしかっただけだった。

焦って理由を問い詰めても、本当のことは出てきません。まず「聞かせてほしい」という姿勢を見せることが、本音を引き出す唯一の方法だと思っています。

「引き止める」と「送り出す」は、どちらが正解なのか

よく経営者仲間に聞かれます。「辞めたいって言われたとき、引き止めますか?」と。

僕の答えは、場合によります。でも基準はひとつです。

この人が、うちで続けることで成長できるかどうか。

もし、辞めたい理由が職場環境や待遇など「こちら側の問題」であれば、全力で向き合って改善します。それがまず先です。でも、「次のステップに進みたい」「自分のやりたいことが明確になった」という理由であれば、僕は笑顔で送り出します。むしろ、それが本当の意味で「その人のためになる」と思っているから。

うちで働いた経験が、次の場所でも生きる。それが一番嬉しいことです。引き止めることが、必ずしも愛情ではない。僕はそう思っています。

「辞めたい」と言える組織が、実は強い

これは逆説的に聞こえるかもしれませんが——スタッフが「辞めたい」と言いやすい組織は、意外と離職率が低いと感じています。

なぜかというと、本音を言える文化があるからです。しんどいことを黙って抱え込んで、ある日突然いなくなる——そういう職場よりも、「実は最近しんどくて」と言える職場のほうが、早期に問題に気づいて手を打てます。そして何より、スタッフが「ここは話を聞いてもらえる場所だ」と感じていれば、小さな不満が積もって取り返しのつかない状態になる前に、対話が生まれます。

「辞めたい」という言葉は、組織にとってのSOS信号です。その信号を「うっとうしい」と感じてしまうのか、「教えてくれてよかった」と受け取れるのか。そこに、組織の文化が出ると思っています。

最終的に大切なのは、「この人のために何ができるか」だけ

僕が会社を通じてずっと言い続けていることがあります。

「うちを辞めても、次のステップで活躍できるように育てる。それが、一緒に働く人に対する責任や。」

「辞めたい」と言ってくれた瞬間は、その責任を果たせるかどうか、問われる場面でもあります。感情的に引き止めるでもなく、あっさり切り捨てるでもなく、その人の人生にとって何が一番いいかを、一緒に考えること。それが、僕にできる精一杯だと思っています。

だから今日も、「辞めたい」という言葉をもらったとき、まず「話してくれてありがとう」と言います。そこから、本当の対話が始まります。

株式会社KABUWAKE
代表取締役 高井 律明